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バリトンサックスオーバーホール ~セルマーSA80Ⅱ編~ その2

またまた投稿が遅くなりました。
前回の続きです。

今まで度々このブログでも説明してきましたが、音孔の状態を整えるということはどのようなことかということをここで写真つきで説明致します。

実は音孔の状態というのは、新品の状態ではきれいな平らということはほとんどありません。
下の写真のようにフラットな金属板を当てると、光が漏れているのが解ります。(指で押さえているトコの下ね。)
こうなっていても、タンポの柔らかさが残っているうちは隙間を塞いでくれていますが、数か月もすればタンポが変化していって隙間がどんどん現れます。
特に音孔の歪みが大きい時には、タンポそのものを押したり引っ張ったりして、歪みで生じている隙間を埋めようとするのです。しかし、この方法でタンポを合わせてもタンポ自体にかなりの無理をかけていること、また、もしタンポを合わせても無理に合わせた部分はまた大きく変化していくことはご理解いただけるのではないでしょうか?
20130824_101210.jpg

そこで、この音孔の歪みを修正して、音孔をフラットに加工し、漏れをなくします。金属板で押さえたところから、光の漏れがなくなったのは下の写真で確認できると思います。

この加工を、すべての音孔に対して行います。とても手間のかかる工法ですが、タンポで音孔を塞いだときの精度が飛躍的に向上するのは言うまでもありません。
20130824_101716.jpg

次の写真も少しわかりにくいですが、キイのカップも意外と大きく歪んでいたりします。
こうした歪みも矯正することで、タンポのカップへの収まりの良さが大きく向上します。
このように、あらゆる手段を使い、タンポがごく自然な形で音孔を塞げるように、地味な調整を重ねていきます。

ちなみにこのキイカップ修正も、すべてのキイカップに対して行います。
20130824_143409.jpg

そして、管体のお風呂の時間です。
アルカリ系の洗剤で、音孔周りのヨダレ染みも゚+。(о'∀')bスッキリ!落としていきます。
20130824_141146.jpg

こうしてキイコルクなどを貼ってタンポを収めて、タンポ調整をしていきます。
上記のようなことをしていくことで、とても自然な形でタンポが音孔を塞ぐことができるようになります。
指で押さえたキイに光の漏れが全くないことがわかって頂けるでしょう。
20130901_155241.jpg

ここからは完成後の写真です。

Lowキイのところですが、ここは修理をする前は開きが極端に狭く、音の抜けがさぞかし悪かったろうと推察されます。
修理後は写真のように開きもゆったり取れて、豊かな響きになりました。
20130902_183851.jpg

少し写りが悪いですが、ボコボコの管体も綺麗になりました。ベルを分解するとヘコが直しやすくなります。
20130902_183914.jpg

ズルむけだったケース取手も新品になりました。
こうしたところが直るだけでもずいぶんと気持ちがいいものです。
20130902_183956.jpg

ケースに入れて全体をパシャリ。
はじめと比べたら、ずいぶんと綺麗になりました。音もブリブリ鳴ります。
20130902_183938.jpg

バリトンサックスのように大きな楽器は、修理なども比較的重症になってから依頼が入ることが多いです。
また、キイも曲がりまくったりしていて修理を諦められていることもありますが、結論から言えば、ほとんどの場合直ります。
買い替えとなると大変高額な楽器です。しかし、きちんと修理をすれば新品よりも随分と吹くのが楽になりますので、長らく修理をしていない楽器をお持ちの方は、ぜひオーバーホールをご一考いただきたいと思います。

では。(´Д`)o尸
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Author:klangbrass
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当方は秋田県秋田市で管楽器修理工房をしております。
難しいと思われていたキイの再生などが得意です。
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