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テナーサックス全タンポ交換+ヘコ

久々のアップです。見捨てずにいつもご覧いただいている方、また、修理屋さんを探していてこちらにたどり着いた方、見て頂いてありがとうございます。
今回はテナーサックスの全タンポ交換とヘコ修正です。この内容はお店によってはオーバーホールといういい方も致します。
木管修理においては、音の効果が最も表れる修理で、また基本的な作業内容が全て積み重なった物が修理の結果として、見た目にも音にもはっきりと出てくるので、その工房の力量が試される修理でもあります。

そんな依頼内容の修理が、今回入ってまいりました。楽器はカイルベルスのSXモデル。年代としては20年以上前のモデルで、管体の製造番号のところに「MADE BY WEST GERMANY」との刻印が!
なんと東西ドイツ時代の西ドイツ製のもので、時代を感じてしまいました。

依頼のお客様は学生時代にジャズ研に入られていたそうで、その時にゴリゴリした野太い音が気に入られ、その当時少数派であったものの、この楽器を購入されたそうです。
時々調子が悪くなってはその都度小修理を繰り返してこられていたそうですが、今回当工房で徹底修理をしたいとのことで、そのすべての修理をお任せいただきました。有難いことです。

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今回の修理ではところどころに大きなヘコがあり、そちらの修正もこの際一緒にとのご希望でした。
目立つところで下の写真のところを中心として修正していきます。
ヘコ修理は、もともと凹んで伸びた金属をもう一度伸ばしてなだらかに整え直すという作業ですが、それだけに跡が残りやすいため、慎重な作業と何より明確な仕上がりイメージを持つことが大事になります。
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また、今回の修理では最高級のタンポを使用して、修理することに致しました。当工房ではその修理の内容で(金額や音の方向性など)、純正とは違うパーツを採用することもあります。今回はイタリア製ピゾーニ社のプロパッドを使用いたしました。
これは純正のパッドよりもクオリティの高いもので、皮のしなやかさ、耐久性などで抜群の性能を持っています。それなら、なぜいろいろなメーカーでこれを採用しないんだ?ということになるかと思いますが、これは自分の想像では、メーカーが楽器の価格を決めるところにおいて、原価でこうした高級タンポを採用すると、最終的な販売価格としては流通の過程でどうしても価格が上がってしまうため、あえて安いタンポを採用したりしているということもあるのでないかと想像します。
修理の場合はこのようにタンポのグレードを変更して(特にこうした全タンポ修理の場合は)、それまでと音のイメージを一新するということもとても面白いことです。
修理によってより一層いい状態を作り出すためにも、全て純正の部品を使うことが必ずいいというわけではないこともご理解頂けたでしょうか?
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さて、まずは全て分解をして、ヘコの修正からスタートです。作業中の写真はありませんが、仕上がった写真だけは撮ったので、こんな感じになるということはご確認いただけると思います。
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ここから音孔の修正をして、管体を特殊な薬品で洗浄していきます。
以前のサックス修理の記事でも書いたのですが、新品の音孔の状態というのは決していい状態とは言えません。なのでこうした機会に修正していくのですが、これもなかなか時間と手間がかかります。しかしこれをすることでタンポの密着感、耐久性が飛躍的に向上します。当工房ではこうした手間のかかることも惜しみなく実行していきます。


また、下の写真は??といった感じかと思いますが、実は普通はタンポをパーツ屋さんから取ったら反射板(丸いプレート)は工場で組まれた状態で入荷してきます。しかし、今回の修理品では一般的なタンポの大きさに対してついている反射板の大きさとは規格の変更をしなければいけない箇所が多く、このようにタンポをカスタマイズするために敢えて組み立てキットのような状態で、音孔に合った最適なタンポを製作していくパーツの仕入れをしました。これで、音孔の大きさに対してバランスのいい反射板が装着されることとなります。
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あとは地道にキイの角度を合わせタンポの閉じ具合を調整し、キイコルクやフェルトを取り付けていきます。ここからがいわゆる修理の基本が実践される内容で、修理屋さんによって同じことをしているようでも仕上がりに大きく差が出てくる工程でもあります。
ちなみにキイコルクなども、当工房ではもともとこれがついていたからという理由で、取り付けるコルクを決めたりはしません。取り付ける部分の役割をしっかりと判断して、テーマごとに天然コルク、ラバーコルク、フェルト、ビニールチューブなどを使い分けていきます。そうすることで、全体の耐久性、またタッチの均一性やキイノイズの軽減などが図られるようになってきます。
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そうして形が出来上がり、最終的に試奏をしながらキイの開きやバネの強さのバランスを決定して、完成となります。毎回この作業で持ち主の方よりも先に音を出すこととなるわけですが、ビフォーアフターの違いををはっきりと感じて、誰よりも先に感動できるのはこの仕事の役得だなといつも感じます。

この修理でさらなる音の図太さを獲得しただけでなく、音の艶もはっきりと感じられるようになりました。音の並びも統一感が出て、クロマチックでの音の転がりが心地いいです。

大変高額の修理でしたが、お客様から「金額以上の満足感を得られた」と、大変うれしいコメントを頂戴しました。
このような言葉を頂戴することが、私のような技術屋がさらなるいい仕上げを創造していくモチベーションの元となっています。
今後も更なる満足感をお客様に提供できるように、努力・研究を重ねて参ります。
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klangbrass

Author:klangbrass
管楽器修理工房Klangへようこそ!
当方は秋田県秋田市で管楽器修理工房をしております。
難しいと思われていたキイの再生などが得意です。
金管・木管問わず修理を受け付けていますのでご連絡ください。
打楽器修理(ティンパニ修理等)も致しております。

HPアドレスhttps://www.klangbrass.net
下記のリンクの欄からご覧ください。
工房の場所や情報、また中古楽器情報も掲載しています。

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