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取り扱いにはお気をつけて。。。  ―ファゴット音孔再生―

前回アルトクラのオーバーホールをアップしましたが、そちらと並行してこんな修理もしていました。

今回はファゴットの修理ですが、これから紹介する内容は、学校の備品ではとてもよく見受けられる症状です。

ファゴットは構造的にウォーターキイなどを持たず、ダブルジョイントの下部に水が溜まりやすいのですが、正確な取り扱いの方法を習った生徒が少なく、水抜きをほとんどしないまましまっていて、木が水を吸って腐食してしまい音孔の形状が著しく変形しています。
今回の修理でも、長年かけてこのような状態になってしまったのでしょう。こうなると楽器店さんからは修理を断られるケースが多いかと思います。

修理屋さんとしてはほっとけない状態なので、この音孔再生をしていきます。今回はこれをメインにご紹介していきます。
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写真がちょっとわかりづらいのですが、音孔が欠けていて音孔内面もカビで黒々としております。
すこし木をドライバーなどでツンツンしたら木がボロボロと崩れてしまいます。



まずは、この音孔が腐ってしまっているところを全て削り落とし、硬い正常な木部が出るまで削っていきます。
虫歯治療の歯医者さんのように、病巣部を取り除いていきます。
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腐った部分は取り除かれ、病巣部は綺麗になりました。


ここからいろいろなことをして、エボナイト(木管のマウスピースなどに使われる材質)のパイプを自作して、音孔に埋め込み、音孔の形状と一体化するように成形していきます。
具体的な方法は公表しませんが、音孔の角度や高さ、形の作り方はなかなか技術を要します。
NEC_0370.jpg
このような修理方法を今回は取りましたが、このようにエボナイトのパイプを埋め込むことにより、今後の音孔のトラブルはほぼ無くなります。


タンポを取り付けて合わせました。
音孔の形状がきれいなので、ものすごくタンポが良く密着します。
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今回の修理ではダブルジョイントのタンポは全部、その他のタンポもところどころ交換しました。


ところでファゴットのジョイント部分に糸を巻いているものにもコルクグリスをつけていることがありますが、糸を巻いている部分はコルクグリス厳禁です!
ファゴットジョイントは糸を巻いている場合はジョイントのきつさを糸の増減で調整していて、そこにグリスをつけると糸が早々に劣化してしまいます。
今回の修理ではジョイント糸も全て交換しました。
NEC_0367.jpg


そのほか、ブーツのパッキン部分の漏れが大きく、そこの修正にも少々手間取りましたがこれがしっかりすると音の鳴りが大きく向上します。
そんなこともしながら、各部のサビ落とし・細かなところの汚れも全て分解した際に修正して、組み上げました。古い楽器でもとても気持ちよくなります。

NEC_0372.jpg

組み上げて試奏をして完成です。今までとは比べられないほど大きな音が出ます。鳴ります(d゚ω゚d)

ファゴットは買うと金額も大きく、なかなか団体様では古い備品に困っておられることも多いかと思われます。
しかしながら、このように音孔にトラブルが発生していても対処の方法はございます。

しかも修理には技術者の経験と慣れも必要な部分が多いので、このようなダブルリード系の修理でお困りの方はご一報いただければと思います。

もっとファゴットは使えるものになるはずです。


それでは。(´Д`)o尸
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アルトクラ フルオーバーホール その5 完成

さて、長らく取り掛かっておりました、アルトクラの修理もようやく完成して、依頼を頂いた団体様にもようやく納品することができました。

各部がどのように仕上がったかを、できるだけ細かく見て頂けるように、写真をたくさん用意しました。
オーバーホールをご依頼する際のご参考にしていただければと思います。

まずは全体の感じです。
NEC_0346.jpg

ベルを中心に写してみました。
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次は下管です。キイの形状を損ねないように仕上げることに苦労しました。
また、ここはキイポストの作り直しを数か所しています。よくよく見ても、そうと解らないようになっています。
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キイカップは磨きが難しいです。(;゚д゚)
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続いて上管です。長いキイの側面を綺麗にするのが、なかなかの労力です。
細かいパーツが多いのも大変なところです。
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ネックはピンクゴールド仕上げです。とても(・∀・)イイ!!です。
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ところで今回の修理では、ケースハンドルも新品に交換しました。
ここがリフレッシュすると、ケースを持つのも楽しくなります。
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納品前の最後の写真です。
嫁ぐ娘を送り出す心境です。(自分には娘はいませんが(´゚∀゚`;))
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そしてこの楽器も当工房からお客様の元へと帰っていきました。
この修理をご依頼いただいた団体様は、前回E♭クラもこれと同様のフルオーバーホールをさせていただきましたが、今回もケースを開けた瞬間、「スゲェ―――――!!!」とのうれしい反応を頂きました。

この先様々な演奏会でこの楽器の輝く姿が見られることでしょう。
新たに生まれ変わったこの楽器が、今後のこの団体様の新たな歴史を作ってくれることを大いに期待しています。
最後に、長いこと修理に時間がかかったにも関わらず、ご容赦頂いたことに感謝いたします。


今回の記事で、当店でのオーバーホールというものが、どういうことをするものなのか、ご覧いただいている皆様に参考にしていただけたら嬉しいです。

記事に共感頂けたら、ぜひ拍手なぞ頂ければ、今後の励みにしたいと思います。

それではo(´・з・`)ノ))

アルトクラ フルオーバーホール その4

前回からの続きです。
この楽器はすでに完成しているのですが、記事の更新が追いついておりません。
前回メッキ戻りまでを記事にしましたが、キイを組んでいく前にどんなことをしているか、解説していきます。

まず、キイポストを組む前に、木部の下処理をします。木部の欠けているところを修正し、音孔などに付いた汚れを薬品で落とし、その後全体のオイル処理をします。
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キイポストを組んでみました。ジョイントコルクも新品に交換します。
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続いてキイの仮組みをしていきます。メッキ再生をしたあとは、キイをまともに組めなくなることが多いです。
一つ一つのキイを組みながら、動きの修正をしていきます。
バネもこの時に組んでいきますが、バネの長さも太さも一個づつ違うので、これはこれで大変な作業です。
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次にタンポを組んでいきます。
今回の修理では、純正はスキンタンポを使っているのですが、耐久性を上げるためとタンポの塞がりを向上させるため、白皮タンポを使用します。状況でこのように違ったパーツを選択できるのも、こうしたオーバーホールの修理の良さです。
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後はタンポ調整とキイコルクの貼り付けをしていって仕上げとなるのですが、アルトクラとバスクラは特にレジスターキイの機構に複雑なバランスの調整が必要となります。
特にバスクラはここのトラブルで音が出にくくなったという修理が多いです。

この修理の調整部分で一番難しい技術が要求される部分です。
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いよいよ組みあがりました。組んでみると存在感がものすごいです。
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次回の記事では詳細に仕上がった部分の説明をしていきます。
次回をお楽しみに。では(´Д`)o尸

アルトクラ フルオーバーホール その3

前回の続きです。
メッキ戻りのキイなどについていろいろと解説をしていきたいと思います。

今回の修理では金属部品を全てメッキをし直していますが、オリジナルと仕様を変えています。

具体的には、
ネック、キイポスト、胴リングがピンクゴールドプレート

それ以外はシルバープレートの仕様となっています。

これでも見た目には高級感があふれてきますし、重要な点がピンクゴールドであるということは、機能的・音響的にもとても意味があります。

まずはピンクゴールドの部品から見てください。↓
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これも部分的に金属が溶けてしまっていて成形が大変なところがありました。場所によっては金属を貼って削って、何事もなかったように成形し直してます。
大変なのは、なんといっても数が多い!(60個超)一個一個外す場所を確認しながら、磨いて順番に銅線にくくっていく、、、気の遠くなる作業です。


続いて、キイです。
こちらはシルバーですが、これは大きさ・形がかなり一個づつ違います。
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↓は上管の長いキイです。こういうところはブツブツが残っていると目立ちやすいところです。
また、磨きのムラも発生しやすいので、なかなかテクが要求されると感じます。
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キイカップです。ここのところもメッキ剥がれが多く、ブツブツも多いところです。
山のキワ(キイカップアームともいう。わかって頂けますか?)のところを磨くのが特に大変です。
ここがうまく磨けると仕上がりに大きく差が出ます。
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指の触れるところはもう金属が指の形にえぐれていました。でもそれはそれで指のなじみがいいので、そこを生かしつつ形を整えて、元からこうだったように作りました。
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楕円のところは金属が溶けて、ゲジゲジに毛羽立って痛くなっていました。
成形できれいになりましたが、この作業は案外難しくはありません。(程度にもよりますが)
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大物部品のベルです。
メッキ前↓
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メッキ後↓
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キズ消し加工をしてからメッキをかけ直しました。もしキズを消さずにメッキをしたら、キズがくっきりと浮かび上がってきます。

↓は軽微なヘコを修正してヘコの跡を消す加工をして磨き上げました。
ものすごい映り込みです―――d(゚∀゚d)―――
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ベル磨きは大きい部品だけに、磨きの際に高速回転の布に巻き込まれていってしまう危険度が高い作業です。
やっている間は一瞬たりとも気が抜けません。終わった後はぐったりです。
でもこうしてメッキが上がった姿を見ると、大きな達成感が得られます。

これから組み上げに入ります。次回は完成した姿をお見せしたいと思います。

それではまた(´Д`)o尸
プロフィール

klangbrass

Author:klangbrass
管楽器修理工房Klangへようこそ!
当方は秋田県秋田市で管楽器修理工房をしております。
難しいと思われていたキイの再生などが得意です。
金管・木管問わず修理を受け付けていますのでご連絡ください。
打楽器修理(ティンパニ修理等)も致しております。

HPアドレスhttps://www.klangbrass.net
下記のリンクの欄からご覧ください。
工房の場所や情報、また中古楽器情報も掲載しています。

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