fc2ブログ

E♭クラリネット 再生修理 その3 完成

さて、ようやく完成の記事を作ることができました。
メッキ屋さんの行ったり来たりがあって完成までは約1ヶ月を要しています。
もちろん当工房でもこの仕事ばかりをしていたわけではなく、様々な作業を並行して進めております。

前回からの続きの作業内容としては、
1・キイを仮組みして、動作のチェック
2・バネの取り付け
3・キイコルクの取り付け
4・タンポを取り付けて調整
5・キイのバランス合わせ

これで完成です。
一般的に修理内容として多くの修理屋さんがされているのは、3~5の内容ではないかと思います。
以前からの記事を読んでいただいた方は、今回の修理が手間と時間が大きくかかっていることがご理解いただけると思います。
特にキイの再生は経験がものをいうところが大きいです。やり方を習っただけでは、まずできない内容だと自分では感じています。

そんなわけで、完成した楽器を様々な角度から見てみます。
まずは全体から。
NEC_0251.jpg

苦労したリングの部分です。今後の修理の大きな糧になった部分でもあります。
NEC_0253.jpg
NEC_0254.jpg

下管右手4枚羽(と呼んでいるレバー)や、上管右手サイドキイ(4つ並んだ楕円形)なども、キイの形が変わるほど溶けていました。今回の修正で復活です。
NEC_0255.jpg
NEC_0256.jpg

指が良く触れるサムホールや指掛けは、ピンクゴールドにしています。
これで長年の使用に耐えてくれることでしょう。汚れの付着も少なくて済みそうです。
NEC_0258.jpg
NEC_0259.jpg

組んで全体の姿を収めました。スカイツリーのごとく輝いています。(・∀・)
NEC_0260.jpg

肝心の音ですが、メッキが復活するとハリと重厚感が増す感じです。 d(゚∀゚d)
タンポの影響もあるのでしょうが、立ち上がりが早く音の切れも良いので、連符の時の音の表情が見えやすくなりました。思い描いていたE♭クラの音のイメージに近いです。

NEC_0263.jpg
ケースに入れて、納品です。
顧問の先生にも大満足して頂き「感動した!」とのコメントを頂戴いたしました。

今回の修理ではポストピンクゴールド、キイシルバーメッキの仕様としましたが、ご予算次第で、全部シルバー、全ピンク、24Kゴールド、プラチナなど、いかようにも可能です。
そろそろキイがくたびれてきたなとお感じの方は、ぜひご一考ください。キイが溶け始める前がお安くできるので、(手間が少ないため)お勧めです。
スポンサーサイト



E♭クラリネット 再生修理 その2

さて、前回からの続きです。

いよいよメッキはがしも終わり、キイの再生作業に入ります。下の写真を見ると、「あ!なんてことをするの!」なんて方もいらっしゃると思います。しかしキイの表面が溶けてゲジゲジの状態になっているので、このようにして面を整え直してあげる必要があるのです。もちろん削りっぱなしではなく、最終的に磨きを入れて全体をツルピカに仕上げていきます。
場所によってキイが減り過ぎたところ等は金属を貼って成形し直して、その上で磨きをかけていきます。

NEC_0233.jpg

下の写真は粗磨きが終わった段階です。
リング類は指の形に溶けて減っていたので、金属を貼って成形しております。これで形は再生されました。
ゲジゲジのキイも形状が修復されて、表面はつるんです。
ここからもう3工程くらい踏んでメッキをかけ直します。
以前の記事でも何度も繰り返し申し上げておりますが、メッキはかけただけでは、決して綺麗になりません。メッキの1工程前の磨きが仕上がりの全てを決定します。これは使用する研磨剤や磨きに使う布の材質・硬さ・大きさ、そして研磨機の回転数まで、様々な要素を組み合わせ、仕上がりの方向まで持っていきます。
そしてキイたちはメッキ屋さんへと旅立ちました。
NEC_0234.jpg

約1週間後、キイがメッキ屋さんから帰ってきました。
いつもこの梱包を解いて、メッキの仕上がりを見るのが何とも言えず気持ちのいいものです。各部の仕上がりを見て、キイ一つ一つを確認します。
NEC_0242.jpg

形状が変わってしまっていたリング類も、見事に再生されました。
NEC_0244.jpg
NEC_0247.jpg
少し寄ってみます。このキイのリング部分(他のリングもそうですが)は形の再生をしています。これでリング上面がフラットなので、指のかかりが良くなります。


キイポスト類はピンクゴールドに仕上げています。色合いがとてもきれいで、個人的に好きな仕上げです。
ところで、うちのカミさんはこのキイポストを見ると、とてもカワイイ゚+。゚(・∀・)゚。+゚と思うそうです。自分としてはカッコイイと感じるのですが、皆さんはどのようにお感じでしょうか?
NEC_0246.jpg

キイポストを管体に立ててみました。だんだん楽器らしくなっていきます。ここからバネなどを取り付けていきます。キイによってバネの太さが違うので、注意が必要です。ちなみに当工房ではほとんどのメーカーの修理に対応できるように、0.05㎜刻みの太さでバネを用意しています。
NEC_0248.jpg

さて、メッキをかけた後はキイがまともに組めなくなることがままあります。そのくらい厚くしっかりメッキがかかった証拠なのですが、その一つ一つがしっかり機能するようにキイを合わせていきます。ネジ山の切り直しなどもしていきます。
NEC_0249.jpg

ところで、今回の修理ではタンポをピゾーニ社製のHTパッドを採用しています。フェルトの質が良くて変化に強く、音の立ち上がりも早くなるので、E♭クラには相性がいいのでないかと思い採用しました。
修理の際はご希望により、純正以外の部材もご用意いたします。
NEC_0264.jpg

今回はここまでです。
次回は完成した姿をお見せ致します。ご興味がある方はまた是非ご覧ください。


E♭クラリネット 再生修理

いつもご覧いただきありがとうございます。

今回はE♭クラ再生修理のドキュメンタリーをご覧いただきたいと思います。
予め申し上げておきますが、当工房始まって以来最強の状態のコンディションでした。それだけに今回の修理では自分の中で色々と発見も多くあり、今後のオーバーホールを考える上で収穫の多い一本となりました。

依頼を頂いたところは、ある中学校の吹奏楽部さんで、吹奏楽を経験された方ならほとんどの方がご存知のコンクール全国大会常連校です。ブランドはヤマハのカスタム。ご指導の先生は、音程の良さが気にいられていたそうなのですが、キイその他がくたびれすぎていて、どうしようか、しかし買い替えるとなると金額がかかりすぎる、、、ということで当方に再生の依頼が入りました。
下の写真を見て頂くと良く解るのですが、あらゆる部分のキイが溶けてしまい、特にリングの部分などは指と同じ形に溶けて無くなっています。年間30回以上のステージをこなしながら、日々の練習に耐えてきた楽器の悲鳴が聞こえてきそうです。

期待が大きいだけに非常にやりがいがある修理です。まずは全体の状態をじっくり観察して、キイ再生のプランを考えます。


預かった段階で、メッキの残存率が10%といったところでしょうか?
また、各部のピンホール(地金の浸食によるポツポツの穴)が甚だしいです。この処置をまずもって考えないとなりません。

NEC_0219.jpg
今回はタンポ・コルクを外したあと、キイの残ったメッキを全て取り除くことにしました。生地の状態にすることで、メッキ前の下地の状態を作りやすくなるからです。しかし、これには手間も時間も、そしてお金も(?!)かかります。
しかし、仕上がりのことを考えたら、ここで手間やお金を(!)惜しんではいけません!そう言い聞かせて作業を進めていきます。

NEC_0229.jpg
ところで、管体はキイを外してすっ裸の状態にして、細かいところまで全てクリーニングします。どのようにしてクリーニングしているかは、人によってはショックが大きい方がいるかもしれないので、敢えて伏せておきます。その方が平和かもしれないです。でも劇的に綺麗になります。
(ひとつだけ言うならば、そんなに過激ではありません(・∀・))
NEC_0220.jpg
少し寄って写してみました。音孔周りやポストがあったところの周りなどが、ホコリや積年の汚れがたまっていたのがすっかり解消されました。
NEC_0221.jpg
この管体はこのあとオイル処理をして、汚れ落としで抜けた油分を補充します。

今日のところはここまでです。
実は修理品はとっくに完成しているのですが、筆者がサボっていたせいで、あまりリアルタイムでない報告となっています。

次回からはどのようにキイが再生されていくか、こちらのブログでお知らせしていこうと思います。
またぜひご覧になってください。

こんなのも作りました(・∀・)

しばらくぶりのアップです。
今回は中古でマウスピースが入荷したので、そのメッキ再生をしたのをご紹介します。
上は24Kゴールドメッキ、下は光の具合で分かりにくくなっていますが、ピンクゴールドメッキです。
どちらも年代的には古く、V・Bachの旧刻印と言われているものです。状態的にはメッキがくたびれていたので、物はいいのだから新品に再生しようとして、磨き直して再メッキをいたしました。
どちらも新品と見紛うごときツルピカ具合です。


こちらは Bach 10-1/2C 24K GP
NEC_0267.jpg

こっちが Bach 9C PGP
ちなみにこれは早々に売れてしまいました。
NEC_0266.jpg

もちろん状態によりますが、今お使いのマウスピースでもこのくらいの状態に再生は可能です。以前このブログでもご紹介しましたが、サテンの仕上げもなかなかいいものです。
このように磨き直して再メッキをすると、リムの口当たりがかなり良好になり、使っていなかったマウスピースもメイン用として復帰するかもしれません。

メッキ再生はシルバーならば¥4,200(税別)から、GP,PGPは¥6,200(税別)から承っております。(
トランペットの場合)
1ヶ月近く(タイミングにより変動)かかりますが、プラチナメッキも致しますので、ご希望の方はぜひお問い合わせください。
プロフィール

klangbrass

Author:klangbrass
管楽器専門店・修理工房Klangへようこそ!
当方は秋田県秋田市で管楽器修理工房をしております。
難しいと思われていたキイの再生などが得意です。
金管・木管問わず修理を受け付けていますのでご連絡ください。
打楽器修理(ティンパニ修理等)も致しております。

HPアドレスhttps://www.klangbrass.net
下記のリンクの欄からご覧ください。
工房の場所や情報、また中古楽器情報も掲載しています。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR