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クラリネット中古再生 その2

いつもご覧いただき、ありがとうございます。
実は楽器はとうに完成していたのですが、ブログのアップをサボっておりました。すいません。

前回の記事ではまだバラバラの状態だったので、楽器としてのイメージが掴みにくかったかと思いますが、今回の記事でよく解って頂けるのでないかと思っています。

写真は光の具合で見難い部分もあるかと思いますが、その分写真をいっぱい掲載しました。
まずはご覧ください。

ベルとタルはリングをピンクゴールドメッキにしています。豪華です。
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上管の写真です。
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この辺のシステムはルブランのクラリネットに似ていますね。キイは硬くてとても頑丈です。
サムホール・レジスタートーンホールもピンクゴールドです。
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続いて下管です。上管下管とも一部にコルクタンポを採用しています。抜群のタッチと、立ち上がりの早い音が気持ち(・∀・)イイ!! です。
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ご覧の通りポストは全てピンクゴールドに仕上げています。こうすることで見た目にエレガントさがプラスされるだけでなく、キイのサビへの耐久性も向上し、長年の仕様に耐えられるようになります。
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右手小指のキイの作りに芸術性を感じるのは私だけでしょうか?なんとも言えない曲線美です。
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前の記事にも書いた通り、こちらの販売価格は¥198,450(税込)です。各部にピンクゴールドプレートをあしらった豪華な仕様は、なかなかのものかと思われます。
もちろんこのモデル自体が今後中古で入荷するかは全く持って未定なので、中古の楽器は一期一会です。ましてこの仕様は作らなければ他では入手出来ないので、欲しいと思った方はお早めに当方までご連絡ください。

また、今回の楽器以外にも面白い中古楽器が入荷していますが(クラリネットで)、いよいよもって修理が忙しくなってきたので、再生するのは当分先になりそうです。また中古をいじりはじめたら、こちらでご紹介していきます。

また、自分の楽器をこのような仕様の楽器にしてみたいとお考えの方、喜んで引き受けます。全てのキイをピンクゴールド、24Kゴールドプレート、プラチナプレートなどにすることもご予算次第でいかようにも可能なので、楽器をお持ちの上、ご相談ください。
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クラリネット中古再生 その1

皆様、約一週間のご無沙汰です。
普段の業務のほかに、今回初めての確定申告と青色申告の決算書作成に追われ、やはりこのようなペースでのアップになってしまっています。
ブログのネタはあるのですが、整理して作るのがなかなか大変なので、時々は見てやってください。
フェイスブックをやっていらっしゃる方はアップする度にお知らせしているので、その時にでも見て頂ければと思います。

そんなわけで、今回の記事はクラリネットの中古楽器再生です。
以前の記事にも書きましたが、ただ今作業中の楽器があるので、その内容を少し詳細にご紹介したいと思います。
そうすることで、当工房での中古楽器がどのような手順で作り直されているかがわかるので、ご購入の際に安心感が得られる一つの材料になるかもしれません。

中古の再生とは、それぞれの工房でその意味する内容は異なるかと思いますが、特に当工房ではピッコロ、フルート、クラリネット、オーボエなどのメッキ再生などが得意であり(もちろんバスクラ、ファゴットなども)、そうしたキイや木部のメンテナンスを最大限にやり直すことで新品と見紛うような状態に仕上げることを意味します。
ある意味使用するパッドのグレードを変更したり、メッキも古い年代のものから信頼性の高い日本の工場のメッキを施すことで、新品の時以上の楽器の性能を引き出すことが可能となるので、建築でいうところのリフォームの感じに近いとも言えるかと思います。

今回の楽器はフランスのノブレ製B♭クラリネット45Mです。もうなくなってしまったブランドですが、素晴らしい個体と出会いました。ボロいタンポの状態にもかかわらず、とにかく音の密度が濃いのです。これは仕上がった時の音が期待できます。
手元に届いたときは、こんな状態でした。
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まずは全て分解してポストも外し、完全に素っ裸の状態にして管体の洗浄をして、音孔の汚れなども全て取り去ります。これで、管体の状態を一旦リセットして、オイル処理などを施します。これだけでも見違えるような綺麗さになります。
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しかし見事な木目です。古い楽器ではありますが、この頃は今よりも良質な材がメーカーで入手しやすかったのでしょうか?よほどの高級品でなければ、現代の楽器ではこのくらいの物は拝見することはなかなかありません。
音孔の立ち上がり方もきれいです。音孔がきれいなのは、そのままパッドの密着にも影響します。
この写真で伝わるでしょうか??
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続いてキイ表面のざらついていたメッキを剥離します。ここで分かったのが、キイの下地に分厚い銅(コパー)メッキがついていたことです。もしかしたらこのメッキがあの音の密度に一役買っていたのでないかと想像されます。これにさらにシルバーメッキがのるわけで、かなり音の方も期待が持てます。
ここから磨いてツルピカの状態にします。
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そしてメッキが戻ってきました。以前オーボエ修理の記事でも書いたことですが、メッキというものはただかければ綺麗になるというものではなく、メッキをかける表面がよほどきれいな状態になっていないと、下地の粗さがはっきりと浮き出てしまい、もっとひどいとメッキの密着が悪くなり、メッキの浮きや剥がれの原因となってしまいます。もっとも技術が要求される作業でもあります。
今回はキイはシルバープレート、ポスト・リング・サムホール・レジスター音孔などはピンクゴールドプレートという仕様にしました。
補足で説明すると、ポスト類をゴールドにするということは、ネジ類のサビの発生を軽減するという効果もあります。金は変化しにくい特性があるからです。
もちろん見た目に高級感が出るということもありますが(^^)
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ポストを取り付けていきます。
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ところで、このシステムは技術屋として感心したのですが、ポストをねじ込んで入れるとバネの力でポストが動いてしまうことがあるのですが、この楽器はこうしたことが発生しやすい部分に、回り止めのロックがかかるようにパーツが構成されています。
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こんな感じです。伝わりますか? とても凝った仕掛けです。
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ポストが立ち終わりました。とても楽器らしくなってきています。
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リング類も取り付けて、ジョイントコルクを巻きました。今回の作業はここまでです。次回のアップでは完成した姿をお見せすることができます。
ちなみにこの楽器は販売致します。中古販売価格なんと¥198,450(税込)です。キイは信頼の日本製メッキで仕上げているので、この先数十年の使用に十分耐えてくれることでしょう。完成したらこのブログと当工房ホームページhttp://klangbrass.com/でお知らせいたしますので、ぜひご覧ください。

テナーサックス全タンポ交換+ヘコ

久々のアップです。見捨てずにいつもご覧いただいている方、また、修理屋さんを探していてこちらにたどり着いた方、見て頂いてありがとうございます。
今回はテナーサックスの全タンポ交換とヘコ修正です。この内容はお店によってはオーバーホールといういい方も致します。
木管修理においては、音の効果が最も表れる修理で、また基本的な作業内容が全て積み重なった物が修理の結果として、見た目にも音にもはっきりと出てくるので、その工房の力量が試される修理でもあります。

そんな依頼内容の修理が、今回入ってまいりました。楽器はカイルベルスのSXモデル。年代としては20年以上前のモデルで、管体の製造番号のところに「MADE BY WEST GERMANY」との刻印が!
なんと東西ドイツ時代の西ドイツ製のもので、時代を感じてしまいました。

依頼のお客様は学生時代にジャズ研に入られていたそうで、その時にゴリゴリした野太い音が気に入られ、その当時少数派であったものの、この楽器を購入されたそうです。
時々調子が悪くなってはその都度小修理を繰り返してこられていたそうですが、今回当工房で徹底修理をしたいとのことで、そのすべての修理をお任せいただきました。有難いことです。

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今回の修理ではところどころに大きなヘコがあり、そちらの修正もこの際一緒にとのご希望でした。
目立つところで下の写真のところを中心として修正していきます。
ヘコ修理は、もともと凹んで伸びた金属をもう一度伸ばしてなだらかに整え直すという作業ですが、それだけに跡が残りやすいため、慎重な作業と何より明確な仕上がりイメージを持つことが大事になります。
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また、今回の修理では最高級のタンポを使用して、修理することに致しました。当工房ではその修理の内容で(金額や音の方向性など)、純正とは違うパーツを採用することもあります。今回はイタリア製ピゾーニ社のプロパッドを使用いたしました。
これは純正のパッドよりもクオリティの高いもので、皮のしなやかさ、耐久性などで抜群の性能を持っています。それなら、なぜいろいろなメーカーでこれを採用しないんだ?ということになるかと思いますが、これは自分の想像では、メーカーが楽器の価格を決めるところにおいて、原価でこうした高級タンポを採用すると、最終的な販売価格としては流通の過程でどうしても価格が上がってしまうため、あえて安いタンポを採用したりしているということもあるのでないかと想像します。
修理の場合はこのようにタンポのグレードを変更して(特にこうした全タンポ修理の場合は)、それまでと音のイメージを一新するということもとても面白いことです。
修理によってより一層いい状態を作り出すためにも、全て純正の部品を使うことが必ずいいというわけではないこともご理解頂けたでしょうか?
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さて、まずは全て分解をして、ヘコの修正からスタートです。作業中の写真はありませんが、仕上がった写真だけは撮ったので、こんな感じになるということはご確認いただけると思います。
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ここから音孔の修正をして、管体を特殊な薬品で洗浄していきます。
以前のサックス修理の記事でも書いたのですが、新品の音孔の状態というのは決していい状態とは言えません。なのでこうした機会に修正していくのですが、これもなかなか時間と手間がかかります。しかしこれをすることでタンポの密着感、耐久性が飛躍的に向上します。当工房ではこうした手間のかかることも惜しみなく実行していきます。


また、下の写真は??といった感じかと思いますが、実は普通はタンポをパーツ屋さんから取ったら反射板(丸いプレート)は工場で組まれた状態で入荷してきます。しかし、今回の修理品では一般的なタンポの大きさに対してついている反射板の大きさとは規格の変更をしなければいけない箇所が多く、このようにタンポをカスタマイズするために敢えて組み立てキットのような状態で、音孔に合った最適なタンポを製作していくパーツの仕入れをしました。これで、音孔の大きさに対してバランスのいい反射板が装着されることとなります。
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あとは地道にキイの角度を合わせタンポの閉じ具合を調整し、キイコルクやフェルトを取り付けていきます。ここからがいわゆる修理の基本が実践される内容で、修理屋さんによって同じことをしているようでも仕上がりに大きく差が出てくる工程でもあります。
ちなみにキイコルクなども、当工房ではもともとこれがついていたからという理由で、取り付けるコルクを決めたりはしません。取り付ける部分の役割をしっかりと判断して、テーマごとに天然コルク、ラバーコルク、フェルト、ビニールチューブなどを使い分けていきます。そうすることで、全体の耐久性、またタッチの均一性やキイノイズの軽減などが図られるようになってきます。
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そうして形が出来上がり、最終的に試奏をしながらキイの開きやバネの強さのバランスを決定して、完成となります。毎回この作業で持ち主の方よりも先に音を出すこととなるわけですが、ビフォーアフターの違いををはっきりと感じて、誰よりも先に感動できるのはこの仕事の役得だなといつも感じます。

この修理でさらなる音の図太さを獲得しただけでなく、音の艶もはっきりと感じられるようになりました。音の並びも統一感が出て、クロマチックでの音の転がりが心地いいです。

大変高額の修理でしたが、お客様から「金額以上の満足感を得られた」と、大変うれしいコメントを頂戴しました。
このような言葉を頂戴することが、私のような技術屋がさらなるいい仕上げを創造していくモチベーションの元となっています。
今後も更なる満足感をお客様に提供できるように、努力・研究を重ねて参ります。
プロフィール

klangbrass

Author:klangbrass
管楽器専門店・修理工房Klangへようこそ!
当方は秋田県秋田市で管楽器修理工房をしております。
難しいと思われていたキイの再生などが得意です。
金管・木管問わず修理を受け付けていますのでご連絡ください。
打楽器修理(ティンパニ修理等)も致しております。

HPアドレスhttps://www.klangbrass.net
下記のリンクの欄からご覧ください。
工房の場所や情報、また中古楽器情報も掲載しています。

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