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クラリネットあれこれ

またしばらく更新をさぼっていましたが、また夜なべしながらブログ更新をしております。

さて、ただ今当工房にはちょっと面白いクラリネットが2本中古で入荷していて、ただ今再生中です。
まずは、クラリネットを使ったことがある方は「あれ?」と思うかもしれませんが、このクラリネットは普段使っているベーム式のキイのシステムの物とは全く違うもので、アルバート式と呼ばれるキイシステムの物です。
ブランドは Auguste Buffet PARIS フランスのオーギュスト・ビュッフェです。
詳しい素性はわからないのですが、このAuguste Buffetというブランドは1919年から始まり、1925年には広告を出していますが、いつしか姿が消えてしまっているそうです。(他のサイトより引用)
製造番号もないので、製作年代を調べる術もないのですが、かなり古い物であることは間違いないでしょう。
当方に届いた時には新聞紙にくるまれた状態で入荷してベルもタルも外れない状態でしたが、修理屋さんのコツで外すことができました。ちなみにマウスピースもグラナディラ(木)製です。
知り合いの詳しい方にお話したら、このブランドのベーム式は時折国内で流通しているそうなのですが、このアルバート式はめったに出回っていないそうです。
音色が特徴的で、音量も大きく、ディキシーランドなどのジャズのスタイルを演奏される方には好まれているようです。
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とにかく古く、まともに音は出ない状態です。ついているタンポもおそらくオリジナルでしょう。
キイの状態はメッキが施されていない状態です。この当時はメッキはかけないものだったのでしょうか?

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まずは分解してサビ落としからスタートです。この楽器に新たな息吹を吹き込むことができるようにメッキ再生までして、演奏で使える楽器にしていく予定です。

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ジョイント部分も形が悪いところがあったので削り直して整えます。このあとの作業はまた徒然にお知らせしていきたいと思います。

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さて、次はこれまたフランス製のNoblet(ノブレ)のモデル45です。これは普通の(?)ベーム式クラリネットです。
こちらももうなくなってしまったブランドですが、鳴らしやすい割に音が太く、音程も正確だったことに定評があったようです。
実際こちらは届いた時に何とか音が出せる状態だったので、自分でも吹いてみたのですが、とにかく音の芯の太さを感じられて、響きを作りやすい印象でした。
また、写真をアップで見て頂くと解って頂けるかもしれないですが、とても木目がきれいです。このような木目を持つ物は現代のクラリネットではよほどの高級品でないとお目にかかることはなく、当時の使用している材料の良さもここからうかがえます。

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今は全て分解されていて、キイの仕上げをしていますが、特筆する点はメッキの下地に分厚い銅メッキが施されていたことです。
メッキの密着を良くするために下地に銅をつけることがあるのですが、これも音に関係がありそうです。
また、音孔もきれいに立ち上げられていて、一時期の〇ランポンの高級機種よりはいい状態です。
ただ今メッキ再生中ですが、こちらも作業の様子を今後お知らせしていきます。

気になる方は、また時々このブログをチェックしてください。
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アルトサックス調整 どんなことするの?

今回はアルトサックスの調整です。
でも調整ってどんなことをするのかよくわからない、そんな方々のために当工房での調整というのはどういうものか、それをここで紹介します。
修理をするお店によって調整というものの内容や意味は大きく変わりますので、当工房ではここまでやっていますととらえてください。(もちろん金額によって内容は変わりますが。)

このアルトサックスはカドソンというブランドで、プロのジャズプレイヤーを中心に数年前から国内で徐々にユーザーが広がりつつあるブランドです。最近ではクラシックの奏者もプロプレイヤーで使用される方がいらっしゃいます。
今回はこのユーザーの方は山形から依頼されてきました。年代的には5~6年ほど使用していてその間一度も調整をしたことがない状態でした。音は出ていますが、細かな点を見ていくとタンポに隙間ができていたり、キイノイズが大きくなっていたりと、経年による調整の劣化は発生しています。

まずは全て分解をしてキイコルクの不良部分のチェックやタンポの汚れのクリーニング等をしていきます。特にバランス(キイが2つ以上同時に動作する部分)を司る部分のキイコルクは全て交換を致します。

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この下の写真はベルと主管の接合部分をハンダ付けしているところです。通常はこの作業は調整には含まれません。作業はオプションとなります。というのも普通は大概のメーカーがここの部分は接着剤で固定しているか、またはテープで漏れを防いでいるかというのが現状です。
しかし管体の接合という大事な部分である、ここの部分は本来はハンダで接合して主管とベルを一体化してあげるのが、響きを作るうえではとても大事なことです。でも製作上の都合でほとんどのブランドではこの仕上げは行っておりません。
現在販売されているブランドでここのハンダ仕上げをしているブランドは、ジャパンカドソンだけでないかと思われます。
この頃はまだハンダ付けがなされていなかったので、現行のジャパンカドソンに倣ってハンダ付けを施します。
もちろん他のブランドでもこの作業は追加作業ができますので、調整の際に一緒に依頼をいただければこうした作業をすることは可能です。

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次に管体とネックを特殊な薬品で洗って、内部のサビと汚れをおとし、表面もアルカリ系の洗剤で洗います。強力に汚れが分解されて、ヨダレ染みなどもきれいに落ちます。
ちなみに全タンポ交換の場合は、キイの洗浄まで行います。
また、汚れ落としの効果として、ネックのジョイントがとてもスムーズになります。当工房ではネックコルク交換の場合はネックの洗浄も行っております。(ネック洗浄の追加料金はいただいておりません。)

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この機種(カドソン902シリーズ)の特徴でもありますが、音孔にカーリングが施されております。とても手間のかかる工法で現代では採用されているメーカーはかなり少ないです。この音孔がカドソンの響きの力強さの一因になっているものと思います。調整がハマると大変気持ちのいいタッチになります。
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これで一つ一つのタンポの具合を確認・修正してキイのタイミングバランスも調整していきます。キイの開きとスプリングバランスもこのときに見ていきます。
こうしてすべての調整が完了したら試奏をして完了です。自分が吹いてみて標準の運指の範囲の音は全て+-5セントのピッチに収まっています。サックスのピッチとしてはかなり優秀でないかと思います。
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出来上がりの写真ですが、細かいところの汚れも取れると全体の印象が引き締まります。
調整が仕上がるとクロマチックでの音のつながりも向上し、何よりピアニシモでの音のコントロールが大変楽です。
また、ベル~主管のハンダ付けの影響か、全体の響きがかなり向上し、指に伝わる振動がよりはっきりと感じられます。特に中音Dの音の通りが向上しています。

こちらの楽器ははお客様のところに発送致しました。今回のように県外のお客様にも修理の対応はしておりますので、遠方で修理の対応にお困りの方は、当方まで楽器をお送りくだされば対応いたしますので、遠方の方もお気軽にどうぞ。

ホルンヘコ修理

久々の更新となりました。
今までやってきた内容をご紹介できていなかったので、これからまた少しづつ更新して参ります。

さて、今回はホルンのヘコ修理です。あまり大した内容ではないかもしれませんが、一応こんなこともしています。
こちらは学校備品の修理品ですが、ベル胴の至る所にヘコがあります。管が薄い上にヘコを作りやすい部分なので、良くこのような状態になります。
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でもどちらかというと、この下の写真の方が症状としては大変です。
なかなか写真では伝わりにくいですが、ヘコの影響でベルスクリュー(ネジ)が歪んでしまい、ベルを組み立てる際になかなかうまくネジが入らずにギーッと音がして、ねじ込めなかったり、または組んだら取れにくいといった症状が発生している状態でした。
ホルンを使われている方は、特に学校の備品を使っていた時に、こうした症状に遭遇した経験があるのではないでしょうか?
二次災害が発生する前に、早めに修理をお勧めしたいところです。

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今回のベル胴はまだヘコのサイズが小さかったため、金属のシワなども目立ちにくく修正できました。管が半分くらいつぶれたものは修理の跡が残りやすいので、修理をする場合はご了承ください。
今回の場合は、このくらいの仕上がりです。

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ベルの方も、ヘコを修正しながらスクリューの修正をしていきます。これで正常にベルを組めるようになりました。

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この修理では、このほかにハンダ修正とロータリーの調整を依頼されていたので、一緒にその修理も致しました。
ヘコの修理は小さいうちに修理をすることをお勧めします。大きくなると修理代がかさむということはもちろんですが、心理的にヘコが一つしかないときはその部分が気になっても、そのヘコを放置していくうちにそのヘコが一つ増え二つ増え。。。。最後によほど大きなヘコができるまで放置してしまい、楽器に対しての扱いもどんどん悪くなっていってしまいます。そうした意味からも、いつもきれいな状態をキープさせていくようにして、症状は小さい時に対処することをお勧め致します。

入荷してます。

ちょっと珍しいパーツが入ってきました。ドイツのヘッケル社の純正パッドです。
皮の質がしなやかで、なかなか良さそうです。
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このヘッケルというメーカーは、世に流通しているファゴットのキイシステムの原型となったメーカーで、ファゴットメーカーの中でも最高峰のブランドとして世界的にも有名です。制作の際には細かく仕様をオーダーして製作するそうで、それだけに楽器の値段もなかなかご立派です。(新車の高級車1台分くらい?)
なかなか楽器そのものをお持ちの方は少ないですが、実はパーツはドイツ製の楽器ではほとんど同じサイズが採用されているため、他社の修理にも使えます。
今回ファゴット修理が入ってきたので、このタンポを採用して修理していこうと思っています。
また面白いパーツが入荷したら、ここで紹介していこうと考えています。
またよろしかったらご覧ください。

フルート中古再生 その3 完成

皆様あけましておめでとうございます。
本年もKlangをよろしくお願い致します。
ところで、以前から取り掛かっておりました、フルートの中古再生が完了し、販売をすることができるようになりました。
形式は ムラマツ EX ヘッドクラウン/反射板ピンクゴールドメッキ 特別仕様 です。
まずは仕上がり具合を写真でご確認頂きたいと思います。どうぞ↓

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キイに景色が映りこむほどきれいになっています。

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上記のように、新品同様の仕上がりとなり、今回採用したHTパッドの効果もあってか、とても音の立ち上がりが早くて、表情の変化もつけやすそうです。

販売価格は ¥132,300(税込)  です。新品の参考価格は¥231,000なので、とてもお買い得かと思います。
販売の際は中古保証も半年間お付けいたします。もちろん当方までご来店いただければ試奏も可能ですので、フルート購入をお考えの方はお早めにどうぞ。

ただしここで一つ注意点がございまして、ケースにはかなり使用感があり、はっきり言ってボロい状態です。
ですので、ケースを新しくしたいというご希望がありましたら、別売りですが様々なものをご紹介できますので、ご購入の際にはお知らせください。

今後もKlangでは、こうした中古再生品を作っていこうとしております。その都度こちらのブログ、並びにホームページ http://klangbrass.com/ でご紹介して参りますので、ぜひご覧ください。
プロフィール

klangbrass

Author:klangbrass
管楽器専門店・修理工房Klangへようこそ!
当方は秋田県秋田市で管楽器修理工房をしております。
難しいと思われていたキイの再生などが得意です。
金管・木管問わず修理を受け付けていますのでご連絡ください。
打楽器修理(ティンパニ修理等)も致しております。

HPアドレスhttps://www.klangbrass.net
下記のリンクの欄からご覧ください。
工房の場所や情報、また中古楽器情報も掲載しています。

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