fc2ブログ

クラリネットオーバーホール ~魅惑のピンクゴールド編~ その2

さてさて、早くも前回の続きです。
今回は写真が多いので、解説は少なめです?(・ω・)

前回の写真から、かなりいろいろなことをして、キイを加工していくのですが、下の写真はキイの加工を終えてメッキに旅立つ前の写真です。

このブログの中でも何度となく言っていることですが、金属のメッキというものは、下地の状態が良くなければ、綺麗な状態には成りえません。つまり、メッキをかけただけで、無条件に金属の表面はツルンと綺麗な状態には、決してならないということです。
そのために膨大な時間と手間をかけて、溶けたり減ったりした金属を加工・修正・時には溶接などもして、あるべき形状と面を作っていきます。
それなので、磨きが完了した時点で、写真を見ると「メッキかかっているんじゃないか?」と思われるくらいの仕上がりになっているはずです。
実は、メッキは下地の状態をモロに浮き立たせてしまいます。
この時点で一番難しいのは、磨きが終わった面を見て、メッキ後の仕上がりと自分の考えていた仕上がりが一致するかどうかというところなように感じます。
20140111_152854.jpg

一番苦労した右手三連リングセクションです。
ここはリングも溶けていて、なおかつキイの山の形状も金属が溶けて失われていたところです。
形状を復活させて、ツルピカに磨き上げました。
20140111_152926.jpg
20140111_152950.jpg
20140111_153008.jpg
20140111_153041.jpg
キイのカップなどは、下地からのメッキ浮きが発生していると、ブツブツの面になってしまいます。磨きによって面のタレが発生しないように、仕上げていきます。
そのほか、レバーの指の接触面、長いキイの側面なども、ツルピカに仕上げていきます。


そして、メッキが工場から帰ってきました。ピンクゴールドという金に銅の成分が混じった仕様(実際はもっといろいろあるようですが)の仕上げです。
今回は金メッキとしては極厚の8μ(下地メッキを含んだら10μ以上!)の仕上げとなっています。
これだけかかったら、キイというものも楽器の振動体の一部(というより大部分)なので、それはそれはサウンドに大きく変化をもたらします。
20140117_175255.jpg
20140117_175343.jpg
20140117_175424.jpg
20140117_175917.jpg
20140117_175941.jpg
20140118_135315.jpg

いよいよ組み上げです。ここまでで正常な状態であれば、組んだりタンポの調整をしたりということには、さほど苦労はしません。
実は、楽器を分解する時点で、およそ調整の必要な部分は調整をしてバラしているのです。
なんだか意味の伝わりにくい文章だなと、自分で書いてて感じたりします(。-`ω´-)
20140118_141430.jpg

オーダーがあったレザーパッドを取り付けていきます。
20140120_195204.jpg

キイを組む時は一個一個のキイをこのように拭き上げながら組み立てます。指紋を残すと後々の変色の原因になるので、こうしたところも、気を付けながら組んでいきます。
20140120_200848.jpg



こうしたキイのメッキは一部分だけでも施工することができます。全体には綺麗だけど、一部分だけメッキが弱ってきたところを修正したいといった要望にもお答えしますので、お気軽にご連絡ください。

次回の記事で、組んだ全体像をお見せすることができるかと思います。
では、クラリネットピンクゴールド完成編、ご期待ください。

それでは(^^)/~~~

クラリネットオーバーホール ~魅惑のピンクゴールド編~ その1

気が付いたら一か月も更新をサボっておりました。(;´・ω・)
1月中仕事が無かったわけではなく、忙しさを理由にし、また、夜も飲んだくれていたことが、主な原因です。
そこで、今回は1月の修理の代表ともいえるクラリネットオーバーホールをご紹介いたします。
是非ともご覧いただいて、共感頂けた方は、拍手なんぞをポチっとして頂ければ、ありがたいです。

今回掲載許可を頂いた、このクラリネットは、中学校の教員をされている方の所有の楽器ですが、この方が中学生当時のときに買ってもらった、大変思い入れのある楽器だそうです。
長年使ってきたことと、顧問になった吹奏楽部で、楽器が足りない時に生徒に貸し出している際に、キイなどの劣化が進んでしまったそうです。
これまであまりこの楽器に手をかけてあげられなかったという、依頼者様の思いもあって、今回思い切って大変身を行い、この楽器との新たな演奏生活を始めるお手伝いを、当工房がさせて頂くこととなりました。
決して有名ではない当方を信じて、楽器をお預けいただけたこと、ホントに有難い話です。

まずは、最初の楽器の状態をご覧ください↓
20131222_144913.jpg
20131222_144937.jpg
20131222_144954.jpg
20131222_145047.jpg

リングキイ部分は特に痛みが大きいです。
山の形も溶けてなくなってしまっています↓
20131222_145115.jpg
20131222_145245.jpg
また、写真にはありませんが、管体内面にも大きなひび割れが発生しています。
こちらも綺麗に修正していきます。


まずはサクサク分解していきます。
この時点で針バネもバチバチ切っていきます。ホコリなども後程洗浄していきます。
20131222_151940.jpg

タンポを外しました。今回の修理では、以前の記事で紹介した、皮(レザー)パッドを採用いたします。
20131222_162713.jpg

管体が綺麗になりました。音孔周りなどは、かなり汚れが多いのですが、洗い流されて綺麗サッパリです。
20131230_095326.jpg

綺麗になったら、オイルをつけて保湿ケアです(´ー`)
この状態で乾燥まで数日置いておきます。
20131230_095405.jpg

作業は飛びますが、まだらになったキイのメッキ残り部分を剥離して、生地の状態にします。
20140108_172416.jpg
ここから本格的な加工に入りますが、その様子はまた次回。
あまり間を開けずに更新いたしますので、また是非ご覧ください。

それでは(^^)/~~~

こんなのあります。

久々に修理でない投稿をします。

クラリネットユーザーの方々で、タンポの耐久性に不安をお持ちの方は多くいらっしゃるのではないでしょうか?
当方にはクランポンのクラリネットレザーパッドの在庫がございます。

通常使用されているスキンタンポは、こまめなメンテナンスが必要で、使い方によってはだいぶ寿命が短かったりもします。
そこで、耐久性のアップという意味でも、レザーパッドを修理の際に使用されることをお勧めします。
音色面ではスキンのときよりは落ち着いたトーンになりますが、音孔の塞がりは向上するので、響きの面ではスキンよりもメリットがあるかもしれません。
20131129_181832.jpg
20131129_182003.jpg
写真の通りで、面がフラットで大変きれいです。クランポンの純正部品ではありますが、ヤマハのB♭管・A管でも問題なく使用できます。

出来れば、全タンポ交換・オーバーホール修理などの際に採用することをお勧めします。
もちろん、音色においては一長一短がありますので、良くご検討の上でご依頼ください。

ところで、急激に冷え込みが強まって、クラリネットの管体が膨張することが多くなってきています。
そのまま放っておくと管体の割れの原因になったりするので、早めの対処をお勧めします。
20131129_185006.jpg
このような作業で木部の擦れを少しずつ調整していきます。
演奏後にジョイントが抜けにくくなったと感じていらっしゃる方々、早めにお持ち込みください。

E♭クラ オーバーホール ルブラン編その2 完成

さてさて、更新が遅れましたが、いよいよE♭クラの完成の記事を作ります。
すでにお客様には引き渡し済みですが、メールにてお喜びのコメントを頂戴しました。
我々技術の者にとって、こうした声はとても励みになります。

では前回からの続きです。
ご興味のある方は、前回の記事からお読みください。
もっと興味のある方は、クラリネットのタグから過去の記事をお読みください。

前回出したメッキ前の部材が、メッキを終えてメッキ屋さんから帰ってきました。
20131026_125042.jpg

加工した主列リングのパーツも、綺麗によみがえってきました。
これで形状の違和感は全く無くなりました。
20131026_125121.jpg

キイポストとベル・タルのリングはピンクゴールドに仕上げました。
こうすることで、キイポストでツートンカラーのコントラストが美しい仕上げになります。
20131026_125158.jpg

ところで、今まではキイの方ばかりでしたが、ここからは木の管体です。
積年の汚れを落とすために、音孔その他も洗浄しますが、汚れも落ちますが、木の油分も同時に落ちます。
20131029_152239.jpg
綺麗は綺麗なのですが、生地の色が出て、パサパサ感があります。
人によっては、この方が良いという方もいらっしゃいますが。


そんなわけなので、抜けた油分を取り戻すため、もう一度表面・内面にオイル処理を施していきます。
少しづつ色も元のようになっていきます。
この状態で一日置いて油を定着させます。
20131029_155637.jpg

一日たちました。
今日からポストを組んでいきます。形は似ていますが、1個1個全て違うパーツなので、元と同じに組むのには、多少の慣れが必要となります。
20131030_112754.jpg
だんだん形になっていきます。
20131030_135229.jpg

キイポストを組んだら、キイを1つづつ合わせていって、動きにストレスがなくなるように調整していきます。こんな地味なことを全てのキイにしていきます。
オーバーホールをする上ではとても大事な作業です。
20131030_135311.jpg

続いてはバネ入れです。
メッキをするとバネ穴がメッキで狭くなって、元のバネの太さが入らないようになってしまっていることが、多々あります。
針のようなドリルで0.05㎜刻みでバネ穴を修正し直して、新たなバネを太さ・長さともに合わせていきます。
20131031_105030.jpg

次はタンポの取り付けです。今回はお客様のオーダーで皮タンポを採用しましたが、最後に音を出したときに、この楽器はこの仕様にして正解だったと感じました。
また見た目もキレイです。(d゚ω゚d)オゥイェー♪
20131031_160343.jpg

また、キイコルクの取り付けをしていきますが、この時点でタンポの調整を終わらせて、適したキイコルクの厚みを全て計測しておきます。
そして必要部分にキイコルクを張り付けていきます。
20131101_153336.jpg

全部コルクを貼ったら、キイの形状に沿ってコルクをカットします。ここの仕事が雑だと仕上がりがとても安っぽく見えてしまうので、気に入らなかったら別のコルクを貼り直して再度やり直します。

修理品のクラリネット(その他の木管楽器も)が、たとえ古い楽器でもピシッとして見えるものは、こうしたところがしっかりしているはずです。
近年の楽器では新品の楽器でもキイコルクが雑なものがとても多いです。嘆かわしい。・゚・(ノД`)・゚・。

せめて修理に来た楽器はこういったところはしっかりとやってあげたいと思います。
こうしたオーバーホールの内容の修理は高額なために、お客様の期待も大きいことと思われます。
なので、なおさら小さなところでも妥協なく進めます。
20131101_155742.jpg

後はキイを組んでバランス・開きを調整して完成です。
上から順に写真をご覧ください。
20131101_171618.jpg
20131101_171532.jpg
20131101_171716.jpg
↑ 左手レバーのキイの山は完全に元の形状を取り戻しました。

↓ この辺りのキイは、やや苦労した部分です。でも、すっかり復活してくれたので一安心です。
20131101_171515.jpg
全体の写真です。とってもイイ!♪d('∀'o) です。
20131101_171455.jpg

今回このお客様は長野から秋田へと、修理をご依頼いただいたわけですが、連絡を取り合いながらこうして完成させることができました。
仕上がりもご満足頂けたようで、ホッとしたのと同時に、当方とご自分の判断を信じて修理のご決断をされた依頼者様には、ひたすら感謝を申し上げる次第です。


今回の記事のように、当方では遠方の方の修理もできる限りご要望にお応えしていけるように努めてまいります。
もし、修理にお困りの方がいらっしゃれば、ぜひご相談ください。m(_ _)m

E♭クラ オーバーホール ルブラン編

毎度ご覧いただき、ありがとうございます。

今回は、メッキ再生オーバーホールです。
年間数本はこうした修理が入ってきますが、今回は初めて県外からメッキ再生の依頼が入りました。
今回のお客様は、はるばる長野県から、当方のブログを発見して、この修理の依頼をすることを決められたそうです。
数多い修理工房が全国にある中、選んで頂いたことは大変ありがたく思っております。
その期待に応えるべく、良い仕上がりを作っていきたいと思います。

今回、依頼者様から、掲載の許可を頂いたので、作業経過をこのブログのネタとして使用させて頂きました。
重ねて御礼申し上げます。m(_ _)m


今回のE♭クラリネットは、ルブランのLLモデル。状態はかなりメッキ剥がれが進行しております。

20131010_192013.jpg
指のあたるところは、ほとんど剥がれていて、下地からのメッキ浮きもかなり進んでいます。
リングなども指の形に溶けています。


まずはサクサク分解していきます。
20131011_090136.jpg

そして、メッキの剥離をします。この楽器にはニッケルメッキがかかっていましたが、剥離したら下地に銅メッキが厚くかかっていたことが解りました。これは生かして加工を進めていきます。
20131019_144005.jpg

主列リングは指の形に溶けてしまっておりました。
これを平らになるように加工していきます。少しずつ様子を見ながらいい形に仕上げていきます。
20131019_155326.jpg

こちらは作業前の写真がありませんが、キイの山の部分  ∧ ←こんな形の部分も、溶けて形がなくなっていました。ここも加工して、元の形に修正していきます。
20131019_160927.jpg

下の写真が再生修理の真骨頂だと、自分では感じているのですが、下磨きをするとキイカップが溶けてブツブツが発生しているのが見えてきます。ここをブツブツが消えるように様々なことをして、面を整えます。
こうした部分が多いほど、修正は大変になっていきます。可能な限り修正していきます。
20131019_175222.jpg

修正されました↓ 面のブツブツがなくなって綺麗になっています。これを全てのキイに施します。
一個一個程度の差はありますが、同様の状態に仕上げます。
上の写真と比べたら、違いが良く解って頂けるのではないでしょうか?
20131021_143141.jpg

他のキイも仕上げ磨きをします。この段階でも小さなブツブツが見つかったら修正していきます。
キイ部分はシルバー仕上げにする予定です。
20131021_145010.jpg

こちらはキイポスト。部品点数を数えたら50個弱の数になりました。これも一個一個形を成形したりしながら、磨き上げます。
こっちはピンクゴールド仕上げになります。
20131021_172225.jpg


ここまでで、メッキ前の下準備は終わりです。ただ今メッキ屋さんに部材は旅立っております。
次回メッキが戻ってきたら、またレポート致します。

ご依頼者様、完成までもう少しお待ちください(`・ω・´)ゞビシッ!!

アルトクラ フルオーバーホール その5 完成

さて、長らく取り掛かっておりました、アルトクラの修理もようやく完成して、依頼を頂いた団体様にもようやく納品することができました。

各部がどのように仕上がったかを、できるだけ細かく見て頂けるように、写真をたくさん用意しました。
オーバーホールをご依頼する際のご参考にしていただければと思います。

まずは全体の感じです。
NEC_0346.jpg

ベルを中心に写してみました。
NEC_0350 (2)

次は下管です。キイの形状を損ねないように仕上げることに苦労しました。
また、ここはキイポストの作り直しを数か所しています。よくよく見ても、そうと解らないようになっています。
NEC_0347 (2)
NEC_0349.jpg
NEC_0355.jpg
キイカップは磨きが難しいです。(;゚д゚)
NEC_0360.jpg

続いて上管です。長いキイの側面を綺麗にするのが、なかなかの労力です。
細かいパーツが多いのも大変なところです。
NEC_0348 (2)
NEC_0353.jpg
NEC_0354 (2)
ネックはピンクゴールド仕上げです。とても(・∀・)イイ!!です。
NEC_0356 (2)

ところで今回の修理では、ケースハンドルも新品に交換しました。
ここがリフレッシュすると、ケースを持つのも楽しくなります。
NEC_0357.jpg

納品前の最後の写真です。
嫁ぐ娘を送り出す心境です。(自分には娘はいませんが(´゚∀゚`;))
NEC_0361.jpg

そしてこの楽器も当工房からお客様の元へと帰っていきました。
この修理をご依頼いただいた団体様は、前回E♭クラもこれと同様のフルオーバーホールをさせていただきましたが、今回もケースを開けた瞬間、「スゲェ―――――!!!」とのうれしい反応を頂きました。

この先様々な演奏会でこの楽器の輝く姿が見られることでしょう。
新たに生まれ変わったこの楽器が、今後のこの団体様の新たな歴史を作ってくれることを大いに期待しています。
最後に、長いこと修理に時間がかかったにも関わらず、ご容赦頂いたことに感謝いたします。


今回の記事で、当店でのオーバーホールというものが、どういうことをするものなのか、ご覧いただいている皆様に参考にしていただけたら嬉しいです。

記事に共感頂けたら、ぜひ拍手なぞ頂ければ、今後の励みにしたいと思います。

それではo(´・з・`)ノ))

アルトクラ フルオーバーホール その4

前回からの続きです。
この楽器はすでに完成しているのですが、記事の更新が追いついておりません。
前回メッキ戻りまでを記事にしましたが、キイを組んでいく前にどんなことをしているか、解説していきます。

まず、キイポストを組む前に、木部の下処理をします。木部の欠けているところを修正し、音孔などに付いた汚れを薬品で落とし、その後全体のオイル処理をします。
NEC_0334 (2)

キイポストを組んでみました。ジョイントコルクも新品に交換します。
NEC_0338.jpg

続いてキイの仮組みをしていきます。メッキ再生をしたあとは、キイをまともに組めなくなることが多いです。
一つ一つのキイを組みながら、動きの修正をしていきます。
バネもこの時に組んでいきますが、バネの長さも太さも一個づつ違うので、これはこれで大変な作業です。
NEC_0339.jpg

次にタンポを組んでいきます。
今回の修理では、純正はスキンタンポを使っているのですが、耐久性を上げるためとタンポの塞がりを向上させるため、白皮タンポを使用します。状況でこのように違ったパーツを選択できるのも、こうしたオーバーホールの修理の良さです。
NEC_0341 (2)

後はタンポ調整とキイコルクの貼り付けをしていって仕上げとなるのですが、アルトクラとバスクラは特にレジスターキイの機構に複雑なバランスの調整が必要となります。
特にバスクラはここのトラブルで音が出にくくなったという修理が多いです。

この修理の調整部分で一番難しい技術が要求される部分です。
NEC_0342 (2)

いよいよ組みあがりました。組んでみると存在感がものすごいです。
NEC_0344 (2)

次回の記事では詳細に仕上がった部分の説明をしていきます。
次回をお楽しみに。では(´Д`)o尸

アルトクラ フルオーバーホール その3

前回の続きです。
メッキ戻りのキイなどについていろいろと解説をしていきたいと思います。

今回の修理では金属部品を全てメッキをし直していますが、オリジナルと仕様を変えています。

具体的には、
ネック、キイポスト、胴リングがピンクゴールドプレート

それ以外はシルバープレートの仕様となっています。

これでも見た目には高級感があふれてきますし、重要な点がピンクゴールドであるということは、機能的・音響的にもとても意味があります。

まずはピンクゴールドの部品から見てください。↓
NEC_0344_20130601080719.jpg

これも部分的に金属が溶けてしまっていて成形が大変なところがありました。場所によっては金属を貼って削って、何事もなかったように成形し直してます。
大変なのは、なんといっても数が多い!(60個超)一個一個外す場所を確認しながら、磨いて順番に銅線にくくっていく、、、気の遠くなる作業です。


続いて、キイです。
こちらはシルバーですが、これは大きさ・形がかなり一個づつ違います。
NEC_0345_20130601080721.jpg

↓は上管の長いキイです。こういうところはブツブツが残っていると目立ちやすいところです。
また、磨きのムラも発生しやすいので、なかなかテクが要求されると感じます。
NEC_0347_20130601080722.jpg

キイカップです。ここのところもメッキ剥がれが多く、ブツブツも多いところです。
山のキワ(キイカップアームともいう。わかって頂けますか?)のところを磨くのが特に大変です。
ここがうまく磨けると仕上がりに大きく差が出ます。
NEC_0348_20130601080724.jpg

指の触れるところはもう金属が指の形にえぐれていました。でもそれはそれで指のなじみがいいので、そこを生かしつつ形を整えて、元からこうだったように作りました。
NEC_0350_20130601080808.jpg

楕円のところは金属が溶けて、ゲジゲジに毛羽立って痛くなっていました。
成形できれいになりましたが、この作業は案外難しくはありません。(程度にもよりますが)
NEC_0352_20130601080809.jpg

大物部品のベルです。
メッキ前↓
NEC_03012.jpg
メッキ後↓
NEC_0354_20130601080811.jpg
キズ消し加工をしてからメッキをかけ直しました。もしキズを消さずにメッキをしたら、キズがくっきりと浮かび上がってきます。

↓は軽微なヘコを修正してヘコの跡を消す加工をして磨き上げました。
ものすごい映り込みです―――d(゚∀゚d)―――
NEC_0356_20130601080813.jpg

ベル磨きは大きい部品だけに、磨きの際に高速回転の布に巻き込まれていってしまう危険度が高い作業です。
やっている間は一瞬たりとも気が抜けません。終わった後はぐったりです。
でもこうしてメッキが上がった姿を見ると、大きな達成感が得られます。

これから組み上げに入ります。次回は完成した姿をお見せしたいと思います。

それではまた(´Д`)o尸

アルトクラ フルオーバーホール その2

いつもご覧いただいている皆様、毎度のことながらアップをサボってすいません(;´・ω・)

その後の作業もある程度進んでいて、写真もたまってきているので、記事を作ります。

当工房は、やっていることは他の修理屋さんと大きく変わらないと思うのですが、他のお店が時間がかかってあまりやらないことを請け負っているためか、大きな修理がこの4月・5月と集中して入ってきております。
特に木管の修理が多く(ほとんどが全タンポ交換クラス)、今日現在でもクラリネット、T・Sax、フルート、ファゴットなどの全タンポクラスの修理を複数本抱えている状態です。(もちろんそれ以外の金管修理もあります。)

そのため、この記事に書いているアルトクラオーバーホールも、他の修理と並行しながら少しずつ進めたり状況でまとめて進めたりしながらやっています。仕上がりが遅くなっていることに、依頼を頂いているお客様からご理解をいただいていることにひたすら感謝したいと思います。

そんなわけで、前回の続きです。
前回メッキの剥離作業ができて、生地の状態になってきていたキイ類ですが、ここからキイの再生作業にかかっていきます。
下のような回転する布でキイを下磨きするのですが、その前段階としてキイのブツブツやガサガサ(表現力が乏しくてスイマセン(;´・ω・`)ゞ)を削り落としていきます。
写真はないのですが、キイの形状を損ねないようにしつつ、粗い面を整えていき、下磨きでおおよその形にします。


下磨き完了です。元の形からどう変わったかは、前の記事を参考にしてください。
元はブツブツのガサガサでした。
NEC_0333.jpg

2個並んだキイを見て、左側は「メッキ上がりか」と思った方、違います。
メッキ前の仕上げ磨き上がりの状態です!
右のキイの状態から、左の状態まで磨き上げて、初めてメッキをかけられるようになるのです。
キイやポスト等数えてみたら、100個を超える(!)数の部品点数がありました。
その一つ一つを上記のような仕上げにしなくてはいけないのです。
オーバーホールはなぜ高額なのか、ちょっとご理解頂けたのでないかと思います。
NEC_0334.jpg


そんなことをやっていって、メッキ屋さんからキイや部品が戻ってきました。
何度やっても、このメッキ戻りの姿を見るのは気持ちの良いものです d(゚∀゚d)
NEC_0336.jpg

今回ネック部分はピンクゴールドにしました。
マウスピースの振動をはじめに受ける部分だけに、この仕様は効果がありそうです。
NEC_0340.jpg

ベルはそこそこ状態が良かったため(キズはいっぱいありましたが)、メッキ剥離をしていないのですが、裏を返せば、シルバーメッキの厚みは2倍です!
ベルは楽器のスピーカーみたいなモンなので、これもまたプレートの効果が出やすい部分です。
NEC_0341.jpg

次回の記事ではメッキ上がりのキイやベルについて、写真とともに苦労した点などを説明していきたいと思います。
ちなみにこの楽器の組みあがりはもう少し先になります。重ね重ねご依頼のお客様には当方へのご理解に、ひたすら感謝を申し上げる次第です。

それではまた。 (´Д`)o尸

アルトクラ フルオーバーホール その1

ゴールデンウィーク、皆様いかがお過ごしでしょうか?
当工房も世間一般の流れに沿って休日を頂いております。
おかげさまで修理の方はかなり込んできておりますが、パーツの手配やメッキなどをする際に、関連の問屋さんやメッキ工場などもお休みをしているため、ジタバタせずに心身のリフレッシュをしておりました。

ところで、4月の中頃とある団体様から、アルトクラオーバーホールを承りました。
以前の記事で何度かしていたメッキ再生オーバーホールを、この楽器にもしていく運びとなったのです。

状態はなかなかです。やりごたえがありそうです。
NEC_0291.jpg

パーツの状態をアップで撮ってみました。↓
NEC_02982.jpg
NEC_0292.jpg
NEC_02942.jpg
上三つが下管の写真です。メッキはげが甚だしく、紙のようにペリペリ取れてきます。もうメッキの密着も弱いです。こうなったらそのままメッキをしても無意味です。


NEC_02992.jpg
NEC_03002.jpg
そして上管です。
こちらも指の掛かるところを中心にメッキ剥がれやピンホールが大量発生しています。


NEC_03012.jpg
NEC_03022.jpg
ベルとネックです。少しヘコがあったり、傷が入っていたりします。
これも今回の修理で修正して行きます。


NEC_03032.jpg
NEC_03052.jpg
また、上下管連絡部のキイに、このようなヒビが発生していたりします。もちろん溶接の再施工が必要となります。

ところで、こうしたオーバーホールをする際には、文章にしても理解されにくい地味な作業が初めに必要となります。楽器の各部を細かく観察して、不良部分を一つ一つ修正するのです。
具体例の一部を挙げると、
・バネ穴位置不良の修正(おそらく生産時点でのもの)
・前に修理を手掛けた修理屋さんが、サビたキイのネジを外そうとしてキイの形が変わってしまった部分の再生
・キイのガタつきが発生している部分の管の継ぎ足し
・ドライバーでこじられて穴が広がったキイポストの穴修正

などなど、いろんなところで修理をされてきた楽器というものは、それぞれの修理屋さんのアプローチで様々な状態になります。当方でオーバーホールをする際は、一度そうした状態を正常な状態にリセットし直すことが必要となります。楽器としての機能に係わる部分なので、全く目立たないですが、とても大事な作業です。

NEC_0308.jpg
NEC_0311.jpg
上記のような作業を先に施してから、機能を失ったメッキを外注で剥離しました。
しかし、メッキ屋さんが込み合っているらしく、帰って来るまで2週間程を要しました。

今回の記事ではここまでです。次ではメッキ前の下処理などを記事にしていこうと考えています。
ではまた。(´Д`)o尸
プロフィール

klangbrass

Author:klangbrass
管楽器専門店・修理工房Klangへようこそ!
当方は秋田県秋田市で管楽器修理工房をしております。
難しいと思われていたキイの再生などが得意です。
金管・木管問わず修理を受け付けていますのでご連絡ください。
打楽器修理(ティンパニ修理等)も致しております。

HPアドレスhttps://www.klangbrass.net
下記のリンクの欄からご覧ください。
工房の場所や情報、また中古楽器情報も掲載しています。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR